こんにちは、つねです。
第6回目のコラムは事業戦略についてです。
事業で成果を出すには対象となる事業の環境分析が必要不可欠です。
だからウェブ解析士も事業戦略を理解する必要があります。
事業戦略とは例えば
- 事業を取り巻く市場はどうなっているのか?
- お客様のニーズにはどんなものがあるのか?
- 競合はどんな活動をしているのか?
- 自社の強み、弱みはなんなのか?
などを把握し、そこから対象事業領域に「これなら勝てる」という成功容認を見つけ、ゴール達成に成果指標を策定することです。
ここでは環境分析を効果的に進めるための考え方、戦略策定における代表的なビジネスフレームワーク、ウェブ解析ツールを紹介します。
私も経営するサラダボウル屋を立ち上げた時も環境分析は時間をかけて行いました。分析の事例も公開してます!
ビジネスフレームワークと対象事業の特定
ビジネスフレームワークとは、「変化する事業環境において、どのような活動を行うべきか」という課題を解決するために必要な現状分析と、戦略立案の枠組みです。
ウェブ解析士がビジネスフレームワークを使う目的は、下記の要因が挙げられます。
- 考えるべきことが整理でき、効率的に課題や解決策を発見できる。
- 関係者間の共通言語として使える(どこに課題があるか分かり易いから話を進めやすい)
- 事象を整理するもの。価値ある解釈はあなたが創り出す。(自分の中の解決案が出てくる)
- 対象事業を特定する(どの事業に対して施策立案を行うのか特定する必要がある。この対象事業の領域を曖昧にすると大切な戦略で認識がずれたままプロジェクトが進んでしまうかも)
- ミッション、マーケティングゴール、対象顧客を定める(ミッションとは、事業が存在する理由。マーケティングゴールとはサービスを通して顧客が体験すること。対象顧客とは自社のサービスの対象となる顧客を、年齢・性別・企業名などのでもグラフィックデータと性格・価値観・趣味などの最古グラフィックデータから明確にする)
外部環境分析
外部環境とは、自社ではコントロールできない影響要因のことです。
外部環境そのものを分析には「PEST分析」と「5フォース分析」があります。
PEST分析
PEST分析は、
- 法規制や税制などの「政治的要因(Politics)」
- 景気や為替などの「経済的要因(Economy)」
- 人口動態や生活者のライフスタイルの変化などの「社会的要因(Society)」
- 特許や新技術開発などの「技術的要因(Technology)」
の4項目から整理されている。
注意点は網羅的に行おうとすると膨大な情報量になるため、対象事業に深く関係した事象だけにフォーカスすることです。
2023年2月あたりで分析した際は下記のようになりました。
5フォース分析
5フォース分析とは、事業の競争環境を分析するためのフレームワークです。
競合他社、買い手、売り手、代替品、新規参入の各5項目の力が影響する度合いを分析し、それぞれの脅威や交渉力を判断します。またそれぞれのプレイヤーに対して事業に有利な活動を行い、力の大きさを見極めて対応した活動を行います。
競合他社(Ribalry)
競合同士の争いは価格やコストであることが多く、値引きやコストカットで利益率が低下。
対象事業の競合他社の数や競争関係の強さを明確にし、競争要因は何であるかを発見する。
買い手(Buyer Power)
直接の顧客・最終顧客(エンドユーザー)。
買い手の交渉力が大きくなると、業界内での値下げ競争が始まり、自社の利益を圧迫する。
売り手(Supplier Power)
事業活動における必要な資源を供給する企業。
少しでも高い価格で製品や部品を供給したいため、交渉関係が発生する。
売り手の交渉力が大きくなるのは、「売り手のプレイヤーが少数の場合」「事業にとって売り手の存在が重要な場合」などが挙げられる。
供給者で売り手の交渉力が強まると、自社の利益を圧迫する。
代替品(Substitutes)
代替品とは、事業の製品・サービスの代わりになる可能性のある製品・サービスのこと。
イノベーションによって、以前からある機能を全く別の機能に変えてしまう、従来の商習慣を変えてしまうことなどが代替品の脅威が大きくなる。
新規参入
新規参入とは、同じような製品・サービスが新しく業界に参入すること。
新規によって業界構造は一気に変化する可能性もある。
それを防ぐには「ブランド力・知名度」「流通チャネル」「必要となる資金力」「他の製品に切り替える時の手間や心理的コスト」などがある。
経営しているサラダボウル屋でやった時は下記のようになりました。
事業分析
自社の事業別の具体的な分析を行うときのフレームワークとして「3C分析」を使うことが多いです。
3C分析
顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Corporation)の3つに注目し事業領域を分析するフレームワークです。
分析の順番は「顧客」「競合」「自社」の順番で分析するようにしましょう。
理由は自社から始めてしまうと顧客や競合の分析の際もフラットな目線で分析できなくなってしまうからです。
顧客
対象事業がターゲットにしているエンドユーザーを指します。
ユーザーの年齢・居住地・収入・職業のような「デモグラフィック情報」とユーザーが商品を探す時の状況や気持ちなどの「サイコグラフィック情報」を分析します。
競合
対象事業の競合に対して、プレイヤーを整理します。
自社と同じサービスで顧客のニーズを満たす「直接競合」と、自社とは別の方法で顧客ニーズを満たす「間接競合」があります。
競合を決める時は、顧客から考えることで的確な競合分析が行えます。
自社
自社の「強み」や「弱み」、「独自性」、それを生み出す「資源」を分析する。
アンケートやインタビューでユーザー意見を聞くことも有効。
経営している飲食店でもやってみました。
市場機会の発見
市場機会の発見にはSWOT分析を活用します。
SWOT分析で市場における機会と脅威、自社の強みと弱みを把握し、クロスSWOT分析で戦略を策定します。
SWOT
SWOT分析とは「強み・弱み・機会・脅威」の4項目の頭文字をとって名付けられております。
「強み(Strength)」
ユーザーのニーズを満たせること。技術の高さ・研究開発力・営業力・マーケティング力などが当てはまる。ユーザーがなぜ、自社サービスや商品を利用してくれるのかのヒントになる。
「弱み(Weaknesses)」
ユーザーのニーズを満たせないこと。リソースで足りていない部分やコストなど。
「機会(Opportunities)」
自社における、事業の成長の機会と考えれれること。
政治、経済、社会、技術、競合、買い手、売り手の動きから、自社にとって成長の追い風となる要因をできるだけ多く抽出。
「脅威(Threats)」
自社における、事業の成長の障害となる外部要因。
自社の強みを打ち消す危険性や、弱みが深刻になる環境の変化、競合他社の動きなど、できるだけ多く抽出する。
強みと機会、弱みと脅威を混同することがあるので注意してください!!
サラダボウル屋の事例だと下記のようになります。
クロスSWOT分析
SWOT分析で収集した情報をもとに自身の解釈を導き、戦略を策定する分析方法です。
「自社の強み×機会:積極化戦略(SO戦略)」
自社の強みを活かし、機会を活かす方法を検討する。自社の強みが高まり、追い風に乗れるような戦略。
「強み×脅威:差別化戦略(ST戦略)」
自社の強みで脅威の影響を避ける方法。
脅威を逆手に取って、競合他社との差別化ポイントを探りながら、戦略を策定する。
「弱み×機会:段階的戦略(WO戦略)」
機会を活かすために、弱みを補強する方法を検討する。
「弱み×脅威:撤退戦略(WT戦略)」
自社の弱みを理解し脅威による影響を避ける、もしくは最小限にする方法を検討する。
徹底的に防衛策を図るか、事業そのものを撤退するのかの判断が迫られる。
STP分析
市場の全体像を把握して細分化し、ターゲットユーザーがいる狙うべき市場を定め、そのユーザーから見た独自性のあるポジションを明確にする分析手法です。
STP分析を行うことにより自社の製品・サービスで効率よく売り上げを伸ばすことを目指しています。
セグメンテーション:勝つための市場を見極める
同じようなニーズを持つユーザー層を分析する。
セグメンテーションする際の指標
- 年齢・性別・職業などの人口動態変数
- 地域・天候・交通状況などの地理的変数
- 価値観・ライフスタイルなどの心理的変数
- 購買におけるベネフィット・購買回数・ロイヤルティ(特定の権利を利用する利用者が、権利を持つ者に支払う対価)の状態などの行動変数
ターゲティング:対象を絞る
セグメントした市場の中から、狙うターゲットを決める。
ターゲティングは企業の状況によっても変わってくる。限られた市場に集中させるパターン、複数の市場を狙いそれぞれに別々の商品・サービスを投入するパターン、全ての市場に同じ商品・サービスを投入するパターンなどが考えられる。
ポジショニング:立ち位置を決める
ターゲットユーザーから選ばれる理由を作り、定めた市場で、どのような立ち位置にするかを決める。競合に勝てる軸を定めることが大切。
価格、品質、ロケーション、サポート体制などが軸になることが多い。
STP分析を効果的に活用する6R
STP分析を行う際は、次の6Rと呼ばれるフレームワークを活用すると良いと言われております。
- 市場規模:業界の市場規模
- 成長性:業界の市場規模の成長度合い。
- 競合状況:業界の競合の数や競争環境。
- 優先順位:ユーザーにとっての優先度。狙った業界の中でどれだけターゲットに関心を持ってもらえるのかを判断。
- 到達可能性:物理的な距離の長さ、ニーズ、文化などのターゲットへ製品、情報、サービスが届くかどうかを評価すること。
- 測定可能性:ユーザーからの反応を測定できるかということ。適切な評価指標を設けるとPDCAを回しやすくなる。
サイトのユーザー分析
ユーザビリティとは、
- ユーザーが目的を達成できるか、できないかの有効性
- ユーザーが目的を達成する際、スムーズに進めれれるか、進められないかの効率性
- ユーザーによる利用の際、心地よく肯定的な気持ちで使えるか、そうでないかの満足性
一言で表すなら「使いやすさ」です。
ユーザビリティを確認するための手法として「ユーザーテスト」がある。ユーザーになりうる人を被験者として行うテスト。
さらにテストには2種類ある。
ユーザビリティテスト:対象サイトの操作感、つまりユーザーのインターフェイス(UI)上の課題はあくや評価を行うための手法。多くの場合、特定サイトやアプリのみを対象とし、事前に決められた行動指示(タスク)をユーザーに提示して、そのタスクが「達成できたか」「スムーズにできたか」「ストレスなくできたか」を確認します。
このテストの問題点はサイトやアプリ内で閉じた行動になってしまうことである。普段ならここで検索エンジンに戻って口コミを調べるなどと当事者視点は難しい。
その問題点を解決するのが「ユーザー行動観察調査」である。
ユーザー行動観察調査:対象サイトのUI上の課題にとどまらず、ユーザーの行動パターンや心理の把握も目的とする手法。
リアルな状況を確認するために、実際の行動に付き添って観察したり、過去の行動のフィアリングや日記調査などの手法もとったりする。
専門家になると経験則でやる手法もある(下記2点)
ヒューリスティック評価:「専門家の経験則、知見をベースに行われる」ユーザビリティの評価手法。
「インタラクションデザインに関する10の一般原則」が有名な考え方。
認知的ウォークスルー:専門家がユーザーになりきって一人で行うユーザービリティテスト。
アクセシビリティの分析
アクセシビリティとは、利用しやすさやアクセスしやすさを指しています。
ウェブアクセシビリティを高めることは、障害者や高齢者を含めた全ての人にとって使いやすさの向上になる。さらにSEOで重要になるクローリングなど機械による情報の読み取りやすさの向上にも役立値ます。
つまり検索エンジンにも高い評価をもらいやすくなり、アクセシビリティを高める=マーケティングに置いてもプラスになります。
ウェブアクセシビリティの改善方法例:
alt属性で画面説明のテキストを表示させることや、HTML構造を適切にすることなどが重要と言える。
その他のウェブアクセシビリティの対応方法は、Web Content Accessibility Guidelines(WCAG)2.13にまとめられています。また達成するための方法はWCAG 2.1達成方法集4があります
アイトラッキング
赤外線などで視線が追える装置を用い、ユーザーがサイトを見ていることの目の動きを測定・把握する手法。高価な装置が必要になるため、ユーザビリティ専門企業が使うツールになる。
具体的に「視線の動き」を測定すること。
据え置き型アイトラッキングやメガネ型のアイトラッキングの2種類に分けられる。
見れる項目は
- ゲイズプロット
- ヒートマップ
- Area Of Interest
エスノグラフィ調査
仮説設定はせずに生活者の行動を観察することで新たな仮説やインサイトを発見することを目的とする。
解説・分析が複雑で、多くの時間と労力がかかる。
ニューロマーケティング
従来では難しかった無意識の心理を定量・定性化する最先端の調査方法。
なんとなくの想いや言語化しずらかった心理的な変化などといった無意識の気持ちを明らかにすること。
LPでどうして興味あって注視したの分からず質問に対して変えてしまうことを防ぐことができる。
脳波、脳血流、発汗、瞳孔計測などいろいろあるが脳波が最も信頼性があり、世界的に活用が広まっている。
計測には大きな費用がかかる上被験者のバイアスがかかるので、AIによる推定分析の方法も取り入れられている。
マーケティングミックス
製品サービスを複数の視点から分析する。
売り手視点の4Pとユーザー視点の4C分析。
4P分析
製品・サービスを構成する要素である、「製品(Product)」、「価格(Price)」、「流通(Place)」、「販売促進(Promotion)」を売り手の視点で分析するフレームワーク。
製品:製品の特性は3つの要素から成り立っている。1つ目は製品のコア、2つ目は製品の形態、3つ目は付随機能である。
価格:コスト、カスタマーバリュー、競合比較で分析する。
流通:販売する場所を選ぶ
販売促進:販売促進手段として、広告(ターゲットの欲しい時に欲しい情報をはしい場所で打ち出すこと)、人的セールス(営業担当者を通して販売を進めること)、パブリシティ(商品やサービスを提供者側が発信した情報をメディアに取り上げてもらうこと)、クチコミなどを分析
4C分析
ユーザーが得る価値:製品・サービスの機能などでユーザーが得られる価値。(4Pの製品)
ユーザーの負担コスト:金銭に限らず、時間的や心理的コストが含まれる。(4Pの価格)
ユーザーにとっての利便性:製品・サービスの購入、使いやすさとして、決済や配送の利便性も含まれる。(4Pの流通)
ユーザーとのコミュニケーション:ユーザーが、日ごろどんなところから情報を得ているのかを分析し、ユーザーが事業と接点をもったタッチポイントを確認する。(4Pの販売促進)
レッドオーシャン・ブルーオーシャン
実店舗の経営をいきなりECで展開しようとしてもうまくいかない。顧客視点を持てていないから。
テクノロジーによって商品の均質化は進み、自社と競合者の差がないか、あっても差別化は限界に近づきつつある。
さらに、「商圏の広域化」「グローバル化」によって競合者の数が増え、さまざまな意味で強者が勝ち残る市場になってきた。
そのためブルーオーシャンで戦うフレームワークも知るべき。
戦略キャンバス
業界における競争要因を並べ、買い手にとって価値の高さを明らかにするチャート。
横軸には「顧客への提供価値としての業界の競争要因」、縦軸には「顧客がどの程度の価値レベルを享受しているか」をとる。
そして、高スコアであるほど、企業がその要因に力を入れていることを意味する。
PMSマップ
縦軸に「パイオニア(Pioneer)」、「移行者」「安住者」を横軸に「現在」「将来」を取り、ブルーオーシャンを創造できるサービスを絞り込むフレームワーク。
パイオニアは、顧客に提供する価値を格段に引き上げる可能性のある人。
安住者は標準的な価値曲線となる層、移行者はパイオニアと安住者の中間に位置する。
このマップから、現在or将来にパイオニアになる製品やサービスを特定する。
非顧客層3グループの分類
購入していないユーザーを潜在的な市場として考え、それぞれの非顧客層の共通点を発見する。
- 第一グループ「消極的買い手」:対象事業の市場に近い存在だが、必要最低限の支出しかないグループ。
- 第二グループ「利用しないと決めた買い手」:サービスを検討した上で、製品やサービスに満足できず、使わないと判断したグループ。
- 第三グループ「しじょうから距離を置く買い手」:市場から最も遠く、自社の製品やサービスを検討したこともないグループ。